無感動ログ

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ドキドキとワクワクと

仕事のための読書が有効に作用しない根本的な病巣と対処法

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ちょっと掲題の前置き。

MECEな区分ではありませんが超絶バクっと読書の目的を大別すると、下記のような形でまとめられるかなと思います。

  1. 娯楽(漫画とか)
  2. 自己啓発
  3. 受験/資格取得
  4. 学業
  5. ビジネス

1-5までそれぞれ求められる読書の在り方が異なります。1と2はともかくもう個人の好きなように心の赴くままにしていただくのが良いかと思います。自分の感情を満足させることが目的なので、細かな能書きは無しにします。3と4もテストや各種の受験で培ってきた個々人の学習スタイルがあると思いますので言及を控えます。グダグダした前置きになりましたが、今回は5、ビジネスで使うための読書の仕方について具体的に書いていきます。

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仕事のための読書はそもそも必要か

よく知られた話ではありますが、大前研一さんは、自分はほとんど本を読まないと公言しています。命題について自分で調査・分析をして答えを導き出すべきだから・・というのが理由のようです。きちんとインタビューしてファクト集めをして筋の良い仮説を立てて、優秀な同僚や先輩、時にはクライアントと議論を交わして意見を先鋭化させていけば、読書をせずとも、およそビジネスで必要とされるアウトプットは出せてしまうのかもしれません。

 

肌感的な話、日々仕事をする中でも、読書量は多いのに空回りばかりしている人もいれば、本なんて全然読んでいないのに突出した成果を挙げている人もいますよね。きっとどの組織でも。

 

ただですね、ほんと直感的な話で恐縮なんですが、本読みまくった方が良いこと言える気がしません?失敗しないような気がしません?成果出せる気がしません?知識は本を読んでない人よりも全然多いんでしょ?それなのに一体なぜこのようなことが起こるんでしょうか。成果の出せない読書家がなぜ生まれるのか。ずっとよく分からずもやもやしていました。

 

最近、1つ納得のできた答えがあって、

本を「読む」ってのは、CDをCDプレーヤーにかけているようなものだと思う。

CD=本、CDプレーヤー=脳、って感じ。
本を読んでいる間、自分の脳内では、他人の思考が再生されているだけで、自分自身は考えていない。本を読むというのは、他人の思考をなぞることでしかなく、その間、自分は「思考」していない。

引用:http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060222/1140570225

というものです。この例えはとても分かりやすいですね。

 

本を読んでいる間はいわば自動再生。他人の思考を単に読み流しているだけ。

 

CDを聞いているだけでは楽器が弾けるようにならないのと同じで、
本を読み流しているだけでは思考も研ぎ澄まされない・・ということだと思います。

 

楽器を弾けるようにするためには、CDで聞いた音を耳コピして、楽器で再現しようとして、それでも再現のしきれないギャップを埋めるために再度CDを聞き直して、また楽器で再現して・・という繰り返しをしながら徐々に血肉にしていくというプロセスが必要です。

 

本の思考を血肉にするためにもやはり同様のプロセスが必要で、ともかく受け身ではなくゴリゴリ考える。自分の既存の考え方とぶつけてみる。以下はやはり的を射ていて、

単に他人の思考を再生するだけでは、新しい脳神経回路ができたとしても、それが、自分自身の中核回路と密結合せず、なんか、辺鄙な飛び地のような、交通の不便な場所に作られた立派なビルのようなもので、結局、そこは中核回路との行き来が不便すぎて、使えない建物になっちゃうんじゃないかと。
自分自身の中核回路にしっかりと組み込むには、レディーメイドの構造物じゃ、きちんとはまらなくって、中核回路との位置関係とか地形に合わせて、オーダーメイドで、構造物を設計しなきゃ、利用したいときに利用したいように利用できないわけで。
だから、具体的なこと聞かれると、言葉がでなくなっちゃうんで。つまり、血肉になってないわけで。

引用:http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060222/1140570225

自分の脳みその回路に組み込むようなイメージで、今までの人生経験だとか、自分ならではのオリジナルな考え方だとか、そういったものとぶつけ合わせて、新たな思考回路を構築していくようなことが必要なのだと思います。

 

ちょっと抽象的な物言いになってしまいましたが、いうなれば、
本=自分の思考を改造するための素材集
という仮定の仕方です。こういった意識の持ち方をするかどうかで、本を通じた成果の在り方が大きく変わってきます。

本は、素材集とか部品箱として使うのがいんだと思う。本をガシガシかみ砕き、その破片を使って自分の思考を組み立てる。本は読むものではなく、かみ砕き、咀嚼し、自分自身の脳神経システムを改造し、強化し、再構築するための部品として使うもの。

引用:http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060222/1140570225

 

読書が仕事にうまく活かせないという人は、こういった根本的なメンタリティを持つことを出発点とすると良いかと思います。

 

その上で更に以下はビジネスに使うための読書に必要な方法論です。今まで読書法は色々聞いてきましたが、実際に機能したものだけ、あげてみした。結局3つだけです。

 

得たい知識を前もって決めておく

得たい知識を前もって決めたうえで本を読むということ。最終的にどのようなアウトプットをできるようにしたいのか、ゴールを決めます。その上でまずは目次を見てみて、全体の構成を概観。必要な知識に該当する部分だけをピンポイントで読んでいきます。

 

前述の通り、本はあくまで素材集なので、作りたい料理(アウトプット)のために必要な素材だけ得られれば良いという考え方です。

 

複数の本を参照する

1冊の本と心中するのではなく複数の本を参照します。これ、お金が勿体無いとか、読む時間がないとかなんだとかで、あんまりやってる人がいないのですが、絶対意識してやった方が良いです。複数の書籍に触れることで意識せずともCDの自動再生の世界から抜け出し、比較・選択の視点を持って考えを深められるようになります。

 

複数の書籍で繰り返し書かれていることは本質的かつ重要なポイントなのできちんと押さえておく。逆に意見が割れている項目については、論点と主張を把握したうえで自分がどちらの意見を支持するか明確化しておくと良いかと思います。

 

もちろん本のすべてを読むのではなく、知りたいポイントだけに絞って・・ということです。ポイントさえ絞れば本の冊数が多くなってもそこまで負荷にはなりません。

 

情動シミュレーションをする

情動シミュレーションというのも、上記と同じブログ記事の引用です。一文一文の裏側にある作者の情動を妄想も込みで良いのでシミュレーションしながら読むとかなり定着が良いです。感情の流れが理解できると詳細な論理構造も把握しやすくなり、アウトプットのクオリティも上がります。どれくらい突き詰めれば良いか、以下くらいの想像が必要だと書かれています。 

作者や登場人物の背の高さ、体の重さ、姿勢の歪みからくるにぶい苦痛、自分の筋肉や骨や間接や胃や腸やさまざまな内臓が蠢いたり痛んだりする生々しい感覚、汗で服が皮膚に貼り付く不快感、まさぐられ、押さえつけられる苦痛、抵抗できない悔しさ、視界から見えたり触っているさまざまなもののディテールを、リアルに生々しく、自分がいままさに体験しているかのように、作者や登場人物の中に「入り込み」そこでわき起こる様々な感情を自分の感情として味わうことだ。

引用:http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20091101/p1

 

カテゴリを問わず様々な分野の書籍で同じことができて、

たとえば、税務申告や税務調査対策の本を読むときも、著者、税理士、税務官、税務署長、法律や税制を作った官僚、政治家の情動シミュレーションをしながら読めばぐっと読みやすくなる。税制というものが作られた背後には人間の情動が蠢いているし、税制を運営する税務署や税理士にも情動の蠢きや人間ドラマはあるのだ。哲学書を読むときだって、その哲学書を書いた哲学者の情動シミュレーションをやりながらの方が、はるかに直感的にロジックを理解できる。哲学者とは、自分の情動に突き動かされて、極めて個人的な感情で論理を突き詰めた結果、哲学を打ち立てた人達だからだ。経済学の教科書ですら、比較優位や限界生産性の解説の例題で登場する人物の情動シミュレーションをやりながらだと、すっと頭に入ってくるし、理解も深くなる。それどころか、経済理論の限界も肌で感じられる。経済現象というのは、そもそも人間の情動が作り出しているのだから。

引用:http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20091101/p1#seemore

 

その際、書き手側の事情を理解していると、よりシミュレーションがやりやすくなります。例えば、まったく未知の分野の書籍の内容を理解する時、その分野を専門にする業界大手の企業の社員の方にインタビューをしたり、会議の様子や仕事の進め方を疑似体験してみたり、調達・製造の現場を見学してみたり、難しければあるいは、新卒採用ページに掲載される1人1人の社員の写真やバックグラウンド、業務のやりがいや諸々掲載されている現場の写真を眺めてみる、IR資料に目を通してみる、転職情報サイトに掲載されている口コミを見てみる、業界誌を見てみる、スタープレーヤーのインタビュー記事を見たりなどすると、書き手がどういう気持ちとロジックに基づいて文章を書いたのか、グッと想像しやすくなります。